223229072022

言うなればジレンマ。

ここ数年、自分の中で小さな火種となっている問題を書き残しておく。

動物の命とは何か、という事。
ご存知のように僕は多くの動物に囲まれて生きている。
その命と幸せを守る事を自分の幸福感を構成する一つともしている。
家の中に居る動物だけではなく、日常生活で出会う動物にも
出来ればそうありたい、と正直思っている。
そしてその死についても、出来る限りの対応をすることを心掛けている。

その反面、僕は命を喰らう。
かつては、その個体の大小で感じる嫌悪感が違った。
より大きな個体ほど嫌悪感を感じるのだが、
例えば牛と魚であれば、牛。といった感じ。

近年はその感覚が拡大し、例えば虫、
家の中に迷い込んだ虫も、かつては迷いなく殺して処理していたものも、
最近ではなるべく殺したくないと思うようになった。

が、矛盾するのは、それでも命を喰らい続けているという事。
むしろ、衝動として肉を喰いたいという思いは消えぬ。
それが人間と言う動物だという解釈もあろうが、そう簡単に割り切れぬものでもある。
自分自身が欲する衝動が故に、それを否定することもままならぬ。
ベジタリアンやヴィーガンになるか?と聞かれたら、おそらく即答に近い勢いでNoと言うだろう。

都合良く、自分以外の誰かが奪った命の成果物としての肉を食べる存在で居たい。
それでいて身近に居る動物の命は慈しみたい。
大いなる矛盾だ。
ご都合主義ではあるが、どちらも正しい自分の感情であると理解している。
この折り合いについてはいずれ付けていくとして、今回の記事からは除外する。

さて、この記事を書こうと思った出来事が2つ存在している。
一つは先日、千葉に向かうために高速道路を走行していた時のことだ。

周りにはさほど車もおらず、だが、僕はさほどスピードを出して車を運転するタイプではないので
80-90kmくらいでゆるりと車を走らせていた。

その時、何の前触れもなくフロントガラスに何かがパチッと弾ける音がして、
フロントガラス中央に2cmくらいの小さな白いシミがついた。

足か羽のようなものも一緒についていたので、何か虫が当たって爆散したのだろう。

簡単に言うと、僕はただ車を走らせていただけだが、意図せず虫を殺した。
その印たる白いシミがついたガラスをチラチラ見ながら車をしばらく走らせることになる。

まぁ他愛もない出来事だ。
避けれた訳でもないし、向こうが勝手にぶつかってきて死んだのだから、
何か罪悪感を感じる必要もないのかもしれない。

だが、この出来事はとても不本意な出来事として何故か僕の記憶に残ることとなった。

そんな事があってからの2件目だ。

2件目はつい昨日の事。
我が家の居間のエアコンは去年の秋に壊れたままの状態だったが、
今年の6月にいよいよ重たい腰を上げて、交換するエアコンを発注した。
納期と取り付け工事の段取りがかなりかかり、やっと昨日の朝取り付け・交換という運びになったのだが・・・

朝、施工業者のオジサンがやってきて、取り付け場所の確認や配管の経路などを確認している時に
窓枠の上部に見慣れないものがある事に気づいた。

それは小さなハチの巣、、と言っても直径3cm程だろうか。
そのハチの巣の外側に、大きなハチが一匹張り付いていた。
まるで巣を守るかのように。

取り付け工事に関係ない場所であれば、どうするかゆっくり考えられたのだが、
まさに工事に関連する場所で、しかもハチは知る限り、スズメバチではないが
ミチバチのように小さい訳でもなく、そもそもコレはハチなのか?という
ハチに似たその虫に恐ろしく戸惑いを感じながら、上の空でオジサンの説明を聞いていた。

オジサンが説明を終え、機材や工具を取りに車に戻った際に、
まずは張り付いているハチをどうにかするかと考えた。

窓の内側からコンコン叩く
反応なし

棒か何かでつついてみるかと思ったが、一旦離脱した挙句に時間差で帰ってきて
エアコン取り付けてるオジサンが刺されたりしてもな、と思い躊躇する。

時間もないし、取るべき選択肢は限られる。
殺すまたは、死を感じる恐怖を感じこの場に二度と戻らなくする。
だが、後者は虫の気持ちがわからぬ以上、確実性が低いので
やはり前者になる。

身近にあったのは対G用の殺Gスプレーだったので
とりあえず窓から手を出して、一吹き。

ダイレクトに命中し、ハチはさすがに巣から飛び立ち
離脱するかと思いきや、安定しない飛行の末に地面に落ちた。
が、すぐにまた飛び立ち・・・
が、うまく飛べないのか、思うような高度がでない、
と右往左往する。

その時直感的に感じたのは、
ああ、逃げたいのではなく、巣の所に戻ろうとしているのか、という事。

・・・これも主観的にそう思っただけで、何の根拠もない。
が、雄なのか雌なのかは知らぬが、逆の立場ならそうするか、と思ったのも事実。
何かしら得体の知れぬものを噴射され、それを浴びた自分の身体にも不調を来すという事は
巣の中身にも影響が及ぶ、と考えると本能は巣の所に戻るとするのではと思った訳だ。

飛ぶ事もままならなくなったらしいが、ちょうど網戸に着地できたので歩いて巣の方に
戻ろうとする様を見て、「ああ、なんか俺すごく惨い事をしているのでは」という
嫌悪感と罪悪感が押し寄せる。
なんなら泣きそうだ。
初めて見るタイプのハチのようなヤツの懸命な姿を見て
何かグチャグチャの心理状態になった。

が、対G用の威力は凄まじかったらしく、途中で力尽き再び地面に落下。
もうまさに虫の息という感じだったので
涙目になりながら、再噴射してトドメを刺す。

動かなくなったハチみたいなヤツを一旦丁寧にペーパータオルで包み取り、
さて巣をどうするかと、巣の中を覗いてみた。

空っぽだった。

10個くらい在る部屋は全てがらんどうで、卵があったような形跡もない。
もう既に飛び立った後なのか、巣だけ作っただけなのか
アイツは飛び立ち損ねた1匹なのか

何にしろ、棒か何かで追い払う案が正解だったんじゃないのかという後悔すら残るくらいに
なんだか後味の悪い処理だった。

こういう風に無駄に、自分側の都合で他の生き物の命を奪うのは人間だけだよな、
というなんとも処理できぬ思いが心を埋め尽くす。


その日の夕方、気分転換も兼ねどんさんの散歩に出た時のこと。

のっしのっしと歩むどんさんの先に、何かを運ぶアリの列を見つけたのだが
どんさん一切アリを認識することもなく、列を踏みつけて進み、
数匹のアリが潰れてしまったのを見て・・・

ああ・・・そういうもんかい・・・と
少し気が楽になった、という取り留めもない話。



Author: ponte