205426062022

人生は予期しない出来事の連続なんだと思った。
2022年6月某日。
僕は茨城県におりました。
潮来ICで降りるのはいつぶりだろう。
昔ここに頻繁に来ていたというのが信じられん。

約束の時間は13時。
だが、到着したのは8時過ぎ。
かつてより、行ってみたかった場所があった。
鹿島神宮の御手洗いの池の写真が撮りたかったんだよね。
現場について見て想像したより小さいサイズ感に途方に暮れる。
ぉぉぉ・・・小さいやんか。。。

全く間が持たなかったので街ブラに出て見たが、
被写体としては良いのだがクソ暑い。
死ぬわ。
駐車場に車を招き入れたいババァが必死に棒を振っている。

今日は13時の予定がメインだ。あまり消耗する訳にいかん。
名残惜しかったが切り上げて、車に戻った。

まだ予定まで3時間ある。

そうだ海に行こう。(学習能力ゼロ)

僕は海の傍に住んで毎日のように海を見るが、
何しろ目にするのは東京湾の一角。
水平線はおろか、対岸の千葉が見えてしまうので海本来の趣を感じることがない。

海で素晴らしいのは水平線だよ。

近くの海水浴場まで車を走らせること5分。
小さな場所らしく、付属の無料駐車場が満車のようだ。
途中の道に有料の棒振りババァ付き駐車場はあったが、
一度通り過ぎた身としては、そこにおめおめと車を止めるのは
どこか負けた気分だ。

次へ行こう。

GoogleMapではこの海岸線には候補となる場所がいっぱいある。

導かれるままに次の場所に行くと・・・
完全に民家の脇みたいなところの獣道みたいな細道の前に案内された。

Super FXXkだ。

GoogleMapには知性がない。Animal Roadに案内するくらいポンコツだ。

どんどん北上し
やっと大きな公園に着いた。
小さなカメラを手に、海岸の方へ歩いたが、海岸まで遠い。

しかし、眼前に広がる広大な海に少しテンションが上がる。

いいね、これはOPPだね。

が、僕の感動を根こそぎ持っていく、身体から発する警告。
暑すぎ警報だ。

早々に退散して車に戻る。
クーラーの効いてきた車内で少し寝ておこうと思ったが
そういう時に限り目がギンギンだ。
どうしたいんだ俺は。

そうこうしているウチに、なんだかんだ丁度良い時間になったので、現場へと向かう。
性懲りもなく、再びGoogleMapに導かれ、民家の玄関先の行き止まりの道で「目的地です」を告げられる。

帰りたい。

仮に帰るんだとしても、元の場所への戻り方がわからない。
細道で車を前後運動させてUターンし、家の持ち主が出てこないうちに安全圏に移動し車を停める。
そしてやっとスタジオのHPから正しい行き方を入手。
だれか俺に正しい生き方も教えて欲しい。

現地の到着して最初に感じた事は・・・
前日からも思っていたのだが、凄く白い。

そう、今日は僕はココに、
2006年頃のイラクをテーマにした撮影会のカメラとして来たのだ。

だが、僕の目の前にある建物はなんだろう地中海近辺のオーシャンビューな立地に立った
いい感じにヨーロピアンでシャレコキな白い建物なんだ。

試しにカメラで一枚撮って見たが、液晶の中に映し出された景色は
もう9割方「シチリア」である。

オーナーと思わしき、マダムに誘われスタジオ内に。
スタジオ内が土禁であることに一回度肝を抜かれたが、
それ以上にスタジオ内に配置されている家具に謎の呪文のような貼り紙がある。


もはや不安しか感じない。

が、あえて少し時を戻す。

遡る事数日前、一時帰国しているダッチから「土曜日写真を撮ってくれないかな」と頼まれ
今日僕はここに来ている。

思い返せば、1か月前、横浜駅の地下で変な外人のオジサンに絡まれた時に
全く自分の意思に反し「I am a Photographer.」と言い、自称フォトグラファーとなったところから
今回は対価の発生する、いわばプロカメラマンとして現場に立つわけだ。
僕の定義するプロとアマの境界線は写真を撮る事で対価が発生するか否か、であり、
その額に関わらず、しかも腕の優劣に関わらず、これは僕の定義する上でプロとしての仕事なのだ。

あれだけプロになるつもりはないし、フォトグラファーとか言うの恥ずかしいと言っていたのに、
全く僕は自分の思い描いた方向と逆に進んでいるような気がしている。

が、仮に対価が1円であろうと、どんぐりであろうと、
頂く以上、相応のアウトプットを引き渡すのがプロとしての有り様だと思っている。
職種は異なれ、日頃から僕はそういうつもりで本職の仕事もしている。

依頼内容を聞き、情報を仕入れ、イメージを膨らませ、必要な機材を持ち、ここに来た。

そんな僕の初現場は、完全に想定外の連続から幕を開ける。

米軍の特殊部隊がイラク・バクダード付近の民家に囚われた要人を救出するために、当該の民家を強襲。
そういう想定だが、民家がまず土足厳禁。

靴下の特殊部隊が民家にエントリーする様子を見た事があるだろうか?
そのエントリーした民家の家具に謎の呪文が貼ってあるのを見たことがあるだろうか?
そしてそのバクダードの民家の窓から美しい大きな海が見える。
浅い僕の知識でもイラクには南部クウェート付近で海に接した場所があるのは知っているが
大半の場所でこんなに巨大な海は見えるはずがない。

足元と窓が画角に入るのを封じられるという呪縛だらけの撮影会がスタートする。

さらに僕を苦しめるのが、被写体達が静止画用に停止した状態で撮るのではなく
一連の連携した動きを、トレーニングさながらに行っている中で、
彼らの動きを邪魔しない立ち位置で、さらに呪縛と戦い撮る。

三重苦、四重苦目は
クソ天気が良いので、室内と室外の明暗差が凄く大きい。
そこに室外から室内に被写体が突入してくるわけだ。素早く、室内を隙が無いように展開しながら。

これにも正直難儀した。
基本全部影になる。
AFもヒット率が低く、顔認識もしない。
カメラの性能に依存する事もままならんわけだ。

可能なら思い出して欲しい。
僕が日頃SNSに投稿している写真を。

草と犬。
動体は撮らんのだ。
オジサンは撮るが、被写体のオジサンは基本動きが鈍く、なんなら椅子に座っている事が多い。
最近撮った中で最も動いていたものはモルックの棒だ。あの棒が宙を舞う姿を撮ったくらいだ。

なんとも初現場で難易度が高い事・・・
自分で好きに撮って良いなら、疲弊した参加者の表情を撮ってニヤニヤするのだが、
恐らくこの中で一番身体的にも精神的にも削られているのは俺だ。

唯一の救いは、事前に一人ずつ動きの練習を流して行ったので、
僕自身が室内で誰がどのように動くか知ることができたこと。

が、知ることが出来ただけで、特にそれに合わせて対応できたわけではない。

皆が練習している中、試し撮りを続け、早々に単焦点で撮るのを諦めた。
画の質感は単焦点が良いが、動きに対応しきれない。

Z6iiに70-200をつけ、Z5は24-70。
チビ三脚に据え置きで、最奥部から焦点距離を変えながら撮る。
多くが見切れるが、見切れが逆に動きがあるように見えるだろうという期待で撮って見ると
この日唯一のヒットを打った。

が、どうしても海と靴下は画角に入る。
あとは事後の編集でどうにかするしかあるまい、と腹をくくり、
とにかく枚数を撮る。

果たして成果に辿り着くんだろうか・・・

そんなプロローグを紹介して今回は一旦〆ます。

Author: ponte