202205272102

思いがけず、その瞬間は突然に訪れた。

これ個人的な解釈の問題なのですが
例えば写真を生業としている人がSNSとかで肩書に写真家、Photographerとか書いてあるのは
別に良いのですが、明らかにアマチュアの方がPhotographerと書いてあるのは
どこかムズムズしておりました。
いや、いいんです。個人の自由ですし、そう名乗る事も覚悟の表れなのかも知れない。
自分じゃちょっと無理だな、って思ってムズムズする、というだけです。

そもそも論で似たような肩書としては
・写真家
・Photographer
・カメラマン
このくらいがあるように思いますが、個人的な解釈としては

・写真家
 自他共に認められたその人の世界観的なものがある人で、その内面を表現する手法として
 写真を用いる芸術家。

・カメラマン
 ちょっと昭和テイストを感じる言い方のようにも感じるが、一方でテレビなどで見るような
 巨大なテレビ用のカメラを自在に操る熟練のオペレータ的な印象もある。

・Photographer
 横文字なのもあって、ちょっと気取った感じがする。
 ポップなものから写真家との境界線ギリギリくらいの独創的なものまでレンジが広い感じ。

斜に構えた僕の印象はこんな分類なのですが
いずれにしろ「自分自身は?」という問いの答えとしてはどれも当てはまらないので
「趣味:写真」と言うにとどめておいたのです。

そんな僕のバックグラウンドを経て、突然その瞬間は来た、という話。



この話はまさに今日、数時間前に起きた出来事です。
金曜の夜だし、仕事終わりの娘を迎えに行きがてら横浜に買い物に行くというので、
家族全員で横浜まで出掛けました。

僕は家族が買い物をする隙に近くで少し写真を撮ったりして時間をつぶしましたが、
案の定時間を持て余し、嫁達が買い物をしている店の前の広い通路の向かい側でアホみたいに
ボケーっと立って待っておりました。

すると突然左からやたらデカい声と共にこじんまりとしたオジサンが登場し、まっすぐ僕に近寄ってきます。

そして、手に持っていた傘の持ち手(丸い)で僕の脇腹を軽くつつき

「オイ!オマエ!シャシントリタイノカ!」

急にオモシロが登場です。

俺:「え?なに?」
お:「シャシントリタイノカ!ナンデシャシントルノカ!?」

確かにその時僕は首からカメラをぶら下げてましたが電源はおろかレンズにキャップがついたまま。

俺:「いや、撮ってないけど」

ジッとオジサンを見ると、外人・・・イタリア系っていうか・・とにかく日本人じゃないようすです。
カタコトの日本語で何かキレてんのか、単に声がデカいのかわかりませんが
ゴリゴリに絡んできました。

お:「オマエ ナニシテルンダ!ナンノタメニ シャシン トルノカ!」

俺:「何の為に・・って言うか・・自分の為だけど・・・」

お:「チガウ! オマエ ヤクザの為に写真撮ってるだろ!」 (読みにくいのである程度意訳して日本語化します)
俺:「ヤクザ・・?」

お:「Japanese Mafiaダヨ!」

俺:「いや、それはわかるよ。」

お:「Mafiaのタメニ写真撮ってるダロ!」

俺:「イヤイヤイヤ・・」

ここで僕は思いもしない一言を口にしました。

俺:「 I am a photographer.」

日本語たどたどしいし、英語の方が通じるかなって思って言ったんですが
思わぬところで「俺Photographerだし」って言ってしまいました。
アレだけキモいキモい思ってたのに、サラと言ってのけました。

お:「チガウ!オマエPhotographerじゃないね!見た目からチガウ!」
俺:「え?見た目・・・」

白いTシャツにデニム、便所サンダル・・金髪のチョンマゲ。

まぁ・・ある意味Photographerっぽいし、そうじゃないって言えばそうだけど・・・

お:「Mafiaのタメにシャシン撮ってる。その見た目、喋り方、Photographerじゃナイ!」

まぁ、つい2秒くらい前までPhotographerだと思ってなかったから別に異論はないのだけど・・・

俺:「Okay…If I taking a picture here for the Mafia, What is benefit on that picture? What is the target of the picture?」
(もし俺がここでヤクザの為に写真を撮っているとしたら、その写真でどんな利益があるの?何を撮るっていうの?)
って言いたかった。
benefit onじゃなくてbenefit ofだったっけな・・と思いつつ渾身の英語で質問してやりましたよ。

お:「・・・? Photographerジャナイヨ!」


まさかそんな顔なのに英語通じないのか?俺の発音が悪いのか?インド人だって俺の英語聞き取るぞ?
オマエナニジンなんだよ?

お:「オレはシッテるんだ、アレだからな。Photographerはソンナのジャない」

ちょっとここで僕カチンと来ました。

俺:「いやいや、Photographerだっていろんな人やいろんな種類がいるでしょ?
   俺の撮った写真見せようか?
   草好き?
   あ、今日鳩撮ったよ。
   ところでPhotographerの定義って何?
   あ、今オジサンの写真撮っていい?
   仮に俺がPhotographerじゃないなら、俺はナニなの?
   ちなみに俺の本当の職業はITエンジニアだよ。
   ねぇ草好き?」

ここまで矢継ぎ早に質問を繰り出すと

お:「ワカッタ!モウイイ!」
と言って足早に立ち去ってしまいました。

すると入れ替わりでガードマン登場。

え~なんか俺アレですか・・・・と思うと

ガ:「大丈夫ですか?」
俺:「ええ、大丈夫ですけど・・」
ガ:「困った事にはなっていないですか?」
俺:「(直接困ってはいないが、自分の定義が崩れた事で少し困ってます)
   いや、大丈夫です。最終的にご理解頂けたみたいですが。。」
ガ:「カタコトの日本語の人ですよね?」
俺:「はい・・・・」
ガ:「困った人なんですよね・・」

と言いながらガードマン去る。

常習のカラミ屋なんですかね・・・

全く望んだ形でないながら、Photographerじゃ、と言ってしまいました。
今なんだかすごく恥ずかしい気分です。

それでは自称Photographerの今日の作品をご覧ください。


Author: ponte